全ての人に「自分を生きる」覚悟を─4人の型破りな大人たちから、いま伝えたいこと─ #leapday2018

まるで手紙のようなトークセッションだった。
読んでほしい人の顔が次々と浮かんだ。

受験や進学・就職、人生の岐路を迎えた子どもを持つあの人や、まさに今、手探りで未来を切り拓いているあの子。そして、まだ狭い世界で過ごしていた頃の私。

壇上を飛び交う言葉たちは堂々とやさしくて、少しも尖ったところなどない。けれども、まぶしいほど研ぎ澄まされたメッセージが次から次へと胸に刺さり、鎧のような、かさぶたのような濁りをぼろぼろと剥ぎ落としていく気がした。

LEAP DAY 2018、沖縄。

イベントの主軸となる、「Ryukyu frogs」—直訳すると「沖縄のカエル」—という、一風変わった名前のプロジェクトを知ったのは、イベント前日のこと。

「沖縄の持続的かつ発展的な経済自立の実現」をめざす、2008年に始まった人財育成プログラムのことらしい。へえ。中学・高校生がシリコンバレーに研修に行くんだって、すごい。

LEAP DAYでは、Ryukyu frogs生による成果発表と、起業家、イノベーターなどを招いてのトークセッションが行われる。

“LEAPは、飛ぶ、跳ねるという意味ですが、アポロ11号が月面着陸した際に人類の大きな一歩という表現で使われた言葉です。

それらの意味をくみ取り「大きな飛躍をする日=LEAP DAY」と名付け、沖縄からイノベーションを発信していくイベントとして2013年から進化を重ねてきました。”

LEAP DAY公式webサイトより引用

井の中の蛙、大海を知らず?

どうやらそうではないらしい。
“私たちは大海を知っている”のワードを掲げ、自ら考え、力強く飛躍する沖縄のカエルたち。そんな彼らの背中を押す、メンターたちによるトークセッションを書き残しておこうと思う。

いつか、あなたやあなたの周りの人が、今いる井戸の窮屈さを感じた時、飛び出すための勇気となることを願って。

トークセッション
『型破りに生きる』 〜同調圧力、普通を強いる中で生き抜く〜

CONTENTS

1. 登壇者紹介

2. 親から子、愛あるゆえの葛藤に他者の視点を

3. 教育は「大人から子どもにするもの」ではない

4. “自分を生きる”覚悟を。正解は自ら定義していく

5. 純度を上げよう。自分に嘘をついていませんか

6. 会場からの質問
 ─チャレンジには、社会的ステイタスやお金に対する不安が伴います。
これらの不安をどのように払拭していますか?
─同調圧力がさまざまなものの妨げになっていると思います。
人間関係を作る上で大切にしていることは何ですか?

1.登壇者紹介

Speaker
奥田 浩美 / Hiromi Okuda
株式会社ウィズグループ代表取締役
/ 株式会社たからのやま代表取締役

澤 円 / Madoka Sawa
日本マイクロソフト株式会社業務執行役員
マイクロソフトテクノロジーセンター センター長

勝屋 久 / Hisashi Katsuya
勝屋久事務所 代表 / アーティスト
/ 株式会社うむさんラボ コアメンバー

上原 仁 / Jin Uehara
株式会社マイネット代表取締役

Facilitator 
山崎 暁 / Akira Yamazaki
株式会社FROGS 代表取締役社長 / LEAP DAY実行委員会会長

自信のなさからの転換のきっかけ

僕の場合は、単純でした。小・中学校では運動が苦手で─それってもう、最初から負け組ですよ。全然モテない。でも、高校生になってちょっと背が伸びて、ちょっと足が速くなって、ちょっとだけ自信がついた。別の方法でモテることができるということを知った。そこから変わっていきました。(澤さん)

大学院で出会った「Be the change」という言葉です。世界を変えるのではなく、自分が「変化そのもの」になる。硬くて開けられなかったり、石が飛んできたり、それでも未来のドアを開けるのは私でありたいと思っています。(奥田さん)

リストラされ一銭もなくなった時、恋人に「あなたには可能性があるから大丈夫。いいよいいよ、私が働くから!」と言われたこと。肩書きやお金を失っていたけど、許された、こんな俺でもいいんだと思いました。(勝屋さん)

「男の子らしく」の圧力

男性には、肩書きやお金がなくてはならないと思っていた。勝屋さんの発言を受け、奥田さんは「今、どんどん自由になっている女性に比べて、男性は本当に苦しそうだ。」と話す。

人間はもともと、男性性・女性性の両方の性質を備え持つ。しかし、身体的な性別により「あなたは男の子だから」「女の子だから」と言われて育ったことで、行動や思考に制限をかけてはいないだろうか。

平成29年の時点で、15〜65歳までの生産年齢人口の就業率は、男性の82.9%に対し、女性は67.4%。67.4%の女性のうち、派遣、契約社員など非正規雇用労働者の割合は55.5%であり、役職者──係長級以上の役職につく労働者における女性の割合は13.2%にとどまる。

女性活躍の声が大きい今もなお、職場において重要な地位を占めるのはほとんどが男性だ。男性自ら築いてきた、男性が大黒柱となる社会で、私たちが認識している以上に、男性もまた、男性であるがゆえの生きづらさを抱えているのかもしれない。

数値は内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 平成30年版」より抜粋

2. 親から子、愛あるゆえの葛藤に他者の視点を

「親だから」こそ、背中を押せない時がある

子どもの背中を押せるのは、「ちょっとだけ密接で、ちょっとだけ離れた」大人だということに気付きました。——そう話すのは、起業家であり、娘をもつ母でもある奥田さん。

子どもには、普段から「やりたい事をしなさい、自分の意思を持って生きなさい」と教え、自らも自分の意思で生きることを体現してきた。だが、実際に娘の選択に直面した時、母としての意外な感情に戸惑ったのだという。

「娘が『大学に進学しない』という選択をしたとき、頭では彼女の選択を評価していても、お腹の下の方で頭と心が合致しなかったんです。『進学校だったのに、いい大学に行けたんじゃ…』とか、そんなこと今まで考えたこともなかったのに。」(奥田さん)

自分の生き方は自分で決められる。他人の子の背中も押せる。でも自分の子には、背中を押してくれる「周りの人」が必要だった。同じように、価値観のぶれや、自分でも気付かない思い込みに気付かせてくれるのも、周りの存在だ。

「パートナーや仲間に『おかしくない?』と言われたとき、人はムッとすると思うんです。でも、自分を疑うことでキャパシティは広がります。観念、ともいいます。」(勝屋さん)

若い世代に相談されることもあるし、相談することもある。「私の子だから」「家庭のことだから」、と閉じていくのではなく、親と子、周りの大人を交えたやりとりができる環境を作っていくことが重要なのかもしれない。

3. 教育は「大人から子どもにするもの」ではない

「大人の言うことを聞かせる」体制をやめよう

例えば、人生においてずっと学び続けていれば、10代の子から学ぶこともある。例えば、ブロックチェーンやAIに一番近いところにいる世代は10代後半〜20代前半だ。

子どもたちにばかり意識を高めさせて、経験させて、「君たちには日本を背負い、羽ばたいていただきたい」と壇上から話す「いただきたいおじさん」にはならないよう、「君たちが学んできたことを、大人にも還元してください」というスタンスで、一緒に学んでいきたい。

「親だから、愛ゆえに」…?
気付かずに押し付けてしまう親たち

親の就職観は30年前の代物。親から子に転職のアドバイスをするのは、30年前のプログラミングの教科書を渡して、スマートフォンのアプリを作らせているようなものだ。「愛情ゆえ、良かれと思って」でこじらせるのではなく、勇気を出して、第三者のメンターをつけるのも親の役目である。

「無意識に押し付けている場合もあります。ずっと、娘に海外に興味を持ってほしい、海外の大学にいってほしいと思っていました。家族旅行でエストニアに行って、それはわたしがやりたかったことだと気付いたので、自分でエストニアに会社を作り、挑戦することにしたんです(笑)」(奥田さん)

純度が落ちているものを、ピュアな子どもたちに押し付けてはいないか。濁った考えを押し付けて、子どもの心をも濁らせてしまうような。「子どもと接することで、大人がピュアな気持ちを取り戻す、メンタリングをしてもらうくらいの気持ちでいたほうがいいのかもしれない。」

これもまた、「大人から子どもに」の接し方では得られない視点だ。

4. “自分を生きる”覚悟を。正解は自ら定義していく

同調圧力から抜け出す勇気
「でもさ、自分だけ違うって怖いじゃん」

「自分が辛くないようにすればいいよね。孤独になる勇気は必要だと思う。怖かったけど、僕には孤独なポジションしか選択肢がなかった。変わり者だったし。」(澤さん)

正解を他人に求めるのではなく、自分で定義していく。自分を生きる覚悟を決める。

子どもの時は集団になじまないといけないけど、大人になったらオンリーワンになれと言われる。子どものうちに孤独を感じている人は、将来の成功確率はすごく高いと思います。」(上原さん)

「一人=悪いことではありません。ただ、孤立と孤独、孤高という概念は持っておいた方がいい。孤立は嫌な感じだけど、孤独には幅がある。今はこれをやっているから孤独なんだ、自分の存在はまだ認められていないけど、これは孤高なんだ、とか。」(奥田さん)

日本の学校教育に思うところは

「学校教育を変えようとは思いません。そもそも変えようがないので、何かのせいにして、そこに解を求めても仕方がない。」

学校教育は「等質に、高い知識をつける」という意味では素晴らしいし、抑圧も悪いことばかりではない。縛りつけられる場所があることで、反動として「やりたい」が明確になる。

自由であればいいものが生まれる訳ではなく、現に、アメリカやイギリスでは、寄宿舎で次世代のリーダーが育つことが多い。

「抑圧された環境で個が何を意思決定していくかが大切なのであって、親、地域が子どもに「自分の意思」を持つよう伝え、学校以外の場所を作っていければいいのではと思います。」(奥田さん)

5. 純度を上げよう。自分に嘘をついていませんか

「ここにいる彼らにRyukyu frogs生のメンターをお願いしている理由は、いいアドバイスをくれるからではなく『純度が高い』からです。必要なのは対話で、言葉は日本語じゃなくてもいい。純度が高い中にいるだけで頭と心がひらけて、次の場所に行けます。」

純度が高いとは、どういうことだろう。

簡単なテストがある。4、5歳の子どもに笑いかけた時、同じ笑顔が返ってくる関係を作れるなら、あなたの純度は高いのだそうだ。

反対に、自分に嘘をつくと純度が下がり濁っていく。

「一番ひどいのは、社会や他の人に対しての嘘ではなく、自分に対してついている嘘。それが一個あると、人生が全てずれてしまう。」(奥田さん)

だが、嘘をつかずに生き続けると、孤独を生みはしないだろうか。

奥田さんの場合、クラスの45人、学校全体の450人というコミュニティには居場所がなく、県や国といった日本人だけのコミュニティでも同様だった。インドやシリコンバレーに行き、コミュニティの規模が450万人程度になって初めて、理解者が増えたという。

「どれくらいの 『つながりの規模』が心地いいかの基準を持っておくといいと思います。心地いい規模は人それぞれなので、45人で心地いい人もいると思います。その規模を否定はしません。」

同じ価値観で分かり合える人が、心地いい場所がきっと見つかる。

「同調しなくていい」「学校になんか行かなくてもいい」という言葉は、インターネット上で得られる学びの方が学校の授業より優れているとか、現代の教育はおかしいということを一方的に批判しているのではなく、自分にとって心地いい環境を選択し、自身の解を探し続けてきたからこそ導かれた結論なのだろう。

6.会場からの質問

—チャレンジには、社会的ステイタスやお金に対する不安が伴います。これらの不安をどのように払拭していますか?

「若い頃、お金がないのはコンプレックスでした。でも今はクラウドファンディングを初め、たくさんの解決手段があります。

解決する手段を知った以上、お金は諦める理由にはなりません。あきらめられるのは、そこまでやりたいことではなかった場合。

自分に嘘をついて20年後に後悔する、取り返しがつかないことになる前に、『〜してから思考』は捨てましょう。

例えば、お金が貯まってから結婚しよう、痩せてからジムへ行こう…」(澤さん)

「『お金が揃った、周りからの期待も揃った』からやるのではなく、小さなチャレンジを重ねていく。人生は小さな素振りを続けるようなもので、足りないながらに走りながら、周りを巻き込みながらやっていけば、少しずつお金や人はついてきます。」(奥田さん)

「やってから考える、決めてから考えること。まず起業して、それに追いかけられてどんどん前に進む人もたくさんいます。」(上原さん)

「同じ問題を抱えている人が3人集まれば、問題は『社会課題』になります。個人を助けてくれる人は少ないですが、お金がなくてチャレンジできない人が多く存在するとき、どうしたらいいかを社会に問いかけていくことはできます。」(奥田さん)

—同調圧力がさまざまなものの妨げになっていると思います。人間関係を作る上で大切にしていることはなんですか?

「Give firstを自分のルールにしています。」(澤さん)

「自分の弱みを素直に出して、小さなファンを作っていくこと。弱みを出した分、支えてくれる仲間が見つかるはず。」(奥田さん)

「生きる純度の高い人ばかりいる場所に行く。そうすると純度の高い人の輪ができて、どんどん周りを変えていくことができます。

できないことをカミングアウトすることは大切。本音を伝える勇気(お前は嫌い!と感情をぶつけることではない)、コミュニケーションをとる勇気を持つこと。自分が痛む、濁るから、違和感を無視しないこと。」(勝屋さん)

君は、大海を見たか。
型を破る覚悟と、将来の私たちへ

私が育った島、沖縄。好きな場所だが、居場所だったかと聞かれると分からない。10年前に制服で通った道には、少し息苦しい記憶が残っている。

5%しか女性のいない職場で働いていた頃には、「女々しい」や「中身は男」といった言葉に対し、正体不明の違和感を感じていた。外に出てからやっと、「女なのに根性がある」は褒め言葉ではないと気付いた。

振り返ると、あんがい小さなことで真剣に悩み、小さな世界で生きていた。今もそうかもしれない。

“クラスの45人では足りなくて、学校全体の450人でもやっぱりダメで、日本人だけのコミュニティではなく、インドやシリコンバレーに行って…450万人くらいの規模になって初めて理解してくれる人が増えました。”

「ここではないどこか」ではないが、世界は広い。今、あなたや私が生きている場所は、もしかすると狭い井戸の底かもしれない。自分の目で世界を見よう。思考を巡らせよう。井戸の外に「いいな」と感じる景色が見えたなら、私たちにはいつでも飛び出せる力があることを、しっかり覚えておきたい。

時代は「拙速を尊べ」という。

すべての情報が高速で処理されていくスマートフォンの画面上で、発した言葉はあっという間にタイムラインの下へ押しやられていく。

いつでもどこでも快適に、柔軟に変化する最新のものを。速さには価値があると思う。けれど、今日聞いた話の価値は「新しさ」や「速さ」にはなかった。

40代、50代になった私に繰り返し読んでほしいし、10代の私にも読ませてあげたかった。できるだけ正確に、言葉の輝きを残したままで。

情報のフックを作るための発信方法が、グラフィックレポート。

その場で要約し、デコレーションした情報を右から左へ届けます

普段のポリシーは、「聞いたその場で書き上げる」。今回は、スピードをあえて捨てた。即興のインパクトや温度感を失ってでも、思考を掘り下げたかったから。速さを捨てないと残せない情報だったから、と言い換えることもできる。スピードを理由に、質を落とすことはいくらでもできたが、そうはしたくなかった。

「一心不乱に、取り憑かれるように書いた」…とかっこよく言いたかったけど、描いては消し、軸が定まらないまとめが嫌になってはYoutubeを開いて歌い、スケートをチラチラ眺め…深夜に残り物の味噌汁をすすったりしながら、非常に庶民的な環境下でまとめが完成した。

2018年12月の沖縄はかすかに肌寒く、窓を叩く風には大粒の雨が混じる。深夜の台所でキーボードを叩く肩には、母がビンゴ大会で当ててきたブランケット。こんなふうに、ちょっとださいくらいの見た目でもって、生活に混じり優しく存在し続けるまとめになっているといい。

“よかったねえ、今年のわたし。一年の終わりに、こんなにいい言葉たちに出会えたよ。”

そんなことを考えながら、未来と過去のわたしたちのために、この文章を残そうと思う。

https://twitter.com/sonecco_bot/status/1071616781066788869?s=21

もう一つのセッションも、鋭意まとめ中です。どうぞお楽しみに!

あわせて読みたい

共有